平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。東京共同会計事務所のベトナムデスクです。

ベトナム進出に係る様々な税務・法務情報等を提供したいと考え、本メルマガを送らせて頂いております。

今回のテーマは、次の通りです。

1. ベトナムの改正法人税法の重要なポイントのまとめ
2. 銀行分野におけるベトナム版Sandbox制度に関する議定の概要
3. ベトナム・オフショア開発の今:スピード、適応力、そしてAI

なお、各コラムは執筆者により「寄稿」されたものであり、その文責は執筆されたコラムに限定されています。

ベトナムの改正法人税法の重要なポイントのまとめ
東京共同会計事務所

1. 電子商取引を提供する外国企業の納税義務の明確化

電子商取引プラットフォームやデジタルプラットフォーム経由で、ベトナム国内で商品・サービスを提供する外国企業は、ベトナム国内に恒久的施設がない場合でも法人税の納税義務があることが通達で規定されていましたが、今回の税制改正で法律に明記されました。本規定は近年、電子商取引が盛んになっているベトナムにおけるデジタル経済への対応を強化することが目的だと考えられます。

2. 所得合算ルール関連の取り扱い

  • OECD/G20において合意された国際的な税務上の課題に対応するための課税ルールとして各国で所得合算ルール(Income Inclusion Rule)が導入されていますが、これに基づいて追加の法人税を支払わなければならない場合には、当該追加の法人税額をベトナムの法人税から控除することが可能という規定が定められました。但し、この控除額の計算方法などの詳細については、現段階では明らかになっていませんので、今後公布される関連の政令や発出される通達等の確認が必要です。
  • 出資や連結に伴う資産評価、また合併、会社分割、事業譲渡といった組織再編行為に基づく資産の再評価により発生する差異を課税所得に含めることが規定されました。

3. 非課税所得の追加

  • 科学研究、技術開発、イノベーション、デジタルトランスフォーメーションのために使用する目的で国内外の親会社・子会社・関連会社等の関係者以外の企業、組織、個人から受け取った助成金等を非課税所得として追加。
  • 認証排出削減量(CER)の譲渡収入、CERおよびカーボンクレジットを付与された企業による発行後のカーボンクレジットの初回譲渡収入、グリーンボンドの利息収入、グリーンボンドの発行後の初回譲渡収入等も非課税所得として追加。

4. 中小企業向け優遇税率の導入

 標準税率の20%に変更はありませんが、年間総売上によって以下の様に二つの優遇税率が設けられました。
・税率15%:年間総売上※が30億ドン未満の企業
・税率17%:年間総売上※が30億ドンから500億ドンまでの企業
※「年間総売上」とは直前の課税年度の年間総売上が基準となりますが、詳細な算定方法については今後政令が制定されて明らかになります。

5. 法人税の優遇措置の変更

法人税優遇措置の対象となる業界、産業、地域およびプロジェクトの規模についていくつかの変更がありました。

  • 工業団地における優遇措置(2年間の免税と4年間の減税)が廃止されました。この新しい規定に基づきますと、新規投資プロジェクト/事業拡大は、従来の優遇措置の適用が受けられなくなると想定しています。
  • 業界・産業に関していくつか項目が追加されました。例えば、主要デジタル技術製品の製造、AIデータセンターの設立、中小スタートアップ企業を支援するコワーキングスペースの事業運営への投資、ハイテク法に規定されているハイテク農業企業等が新しく優遇措置に含まれました。
  • 投資資本が6兆ドン以上で、ライセンス取得から3年以内に拠出されるプロジェクトで一定のものは優遇措置の対象外とされました。

6. その他

  • 研究開発基金への拠出。研究開発基金に資金を拠出した場合、従前の規定では年間課税所得の10%に相当する金額までが課税所得から控除可能でしたが、改正法ではこの比率を20%に引き上げました。
  • 損金算入可能な支出。損金算入が可能な支出として追加された費用は、科学研究、技術開発とイノベーション、デジタルトランスフォーメーションに関する支出、カーボンニュートラル等を目指した温室効果ガス排出量の削減、環境汚染の軽減のための支出等が含まれることとなりました。

「寄稿」銀行分野におけるベトナム版Sandbox制度に関する議定の概要
弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所(https://uryuitoga.com/

1. はじめに

2. 概要

(1) Sandbox制度の参加組織

Sandbox制度の参加組織は、ベトナム国家銀行からSandbox制度参加証明書の発給を受けた、信用組織、外国銀行の支店及びFintech会社とされています(同第3条第2号)。なお、このFintech会社とは、「信用組織・外国銀行の支店ではない組織で、ベトナム領土上での合法的な設立許可証又は事業許可証を有するもので、独立してFintechソリューションを市場に提供している又は市場にFintechソリューションを提供するために、信用組織、外国銀行の支店と協力を介するもの」と定義されていることにはご留意ください(同条第1号)。

(2) Sandbox制度の対象となるFintechソリューション

Sandbox制度の対象となるFintechソリューションは、①クレジットスコアリング、②オープンAPI、③P2Pレンディングの3つとされ(同第1条第2項)、それぞれ以下のように定義されています(同第3条第3号ないし第6号)。

クレジットスコアリング信用組織、外国銀行の支店の信用供与の決定を補助するために、個人、組織の威信・信用の程度をスコアリングすることを目的とする、信用組織、外国銀行の支店、Fintech会社の情報技術システムを応用するソリューション
オープンAPI標準化されたAPIの集合であり、当該オープンAPIを共有する信用組織、外国銀行の支店のシステムに対しサービス要求を送付するために、多くの信用組織、外国銀行の支店、Fintech会社及びその他第三者のコンピュータシステムにより使用することのできるもの
P2Pレンディング借手及び貸手である顧客間のデジタルプラットフォーム上で情報を接続し、契約の締結を補助するために、P2Pレンディング会社により提供される、情報技術の応用ソリューション。P2Pレンディングで使用する通貨はベトナムドン

(3) Sandbox制度への参加方法等

Sandbox制度に参加するには、Sandbox制度参加証明書の発給を受ける必要があります。発給手続の概要としては、Sandbox制度への参加登録をする会社等が、申請書や後述する参加基準・参加条件を充足することの説明文書を含む一定の申請書類をベトナム国家銀行に提出し、所定の審査を経て、ベトナム国家銀行が参加基準・参加条件を充足すると判断する場合に、Sandbox制度参加証明書が発給されることになります(同第9条、第10条、第12条、第13条)。

なお、Sandbox制度の参加期間は、Sandbox制度参加証明書の発行から最長2年間(但し、最大2回(各延長は1年を超えない)延長可能)とされています(同第6条第1項、第20条)。

(4) Sandbox制度に参加するための基準及び条件

Sandbox制度に参加するには、Sandbox制度への参加登録をするFintechソリューションが後述する一定の基準(以下、便宜上、「Fintechソリューション基準」といいます。)を充足する必要があり、また、参加を希望する組織が、上記(1)の参加組織(信用組織、外国銀行の支店及びFintech会社)のうち、Fintech会社である場合には、更に、当該会社が、後述する一定の条件(以下、便宜上、「Fintech会社条件」といいます。)を充足する必要があります(※2)(同第8条、第11条)。

まず、Sandbox制度への参加登録をするFintechソリューションが上記(2)の対象となるFintechソリューション(①クレジットスコアリング、②オープンAPI、③P2Pレンディング)の何れであるかを問わず、Sandbox制度に参加するには、以下のFintechソリューション基準及びFintech会社条件を充足する必要があります(同第8条、第11条)。

Fintechソリューション基準 Fintech会社条件

(a) 現行の法的規定が実施・適用に対し具体的・明確に案内していない、技術的・専門業務的な内容を有するソリューションであること

(b) ベトナムのサービス利用者に対する利益・付加価値をもたらす創造的革新性を有するソリューション、特に金融包摂の目標を支援・促進するソリューションであること

(c) 銀行システム及び銀行・金融・外為活動に対する消極的な影響を制限する、リスク管理枠組が設計・策定されたソリューションであり、Sandbox制度の過程において発生するリスクの処理・克服に関する方法が策定されたもので、消費者の権利を保護する方法が策定されたものであること

(d) 活動並びに機能、効用、有益性の側面において、Sandbox制度参加組織により、十分に各措置の精査、評価が実施されたソリューションであること

(e) Sandbox制度の過程完了後に、市場に提供することのできる実施可能性を有するソリューションであること

(ⅰ) ベトナムの領土上で合法的に設立され、活動する法人であり、法令の規定に従った、消滅分割・存続分割・新設合併・吸収合併・組織形態の転換・解散・破産の過程にあるものではないこと

(ⅱ) 法定代表者、総社長(社長)は、経済、経営管理、法律、情報技術の何れかに関する大学以上の資格を有しており、金融、銀行分野の組織の管理者、運営者としての少なくとも2年以上の経験を有しており、法令の規定に従った禁止対象に該当しないこと

また、Sandbox制度への参加登録をするFintechソリューションがP2Pレンディングである場合には、上記に加え、以下のFintechソリューション基準及びFintech会社条件も充足する必要があります(同第8条、第11条)。

Fintechソリューション基準 Fintech会社条件

(f)  自らが提供するP2Pレンディングソリューションにおける借手の最大債務残高を確定及び管理するため、並びに自身が提供するP2Pレンディングソリューションにおける借手に対する最大債務残高及びSandbox制度に参加するP2Pレンディングソリューション全体における借手に対する債務残高に関する規定の遵守を確保することを目的としてベトナム国家信用情報センターで借手に関するリアルタイムの情報の報告及び活用するための措置を有すること

(g)  P2Pレンディングソリューションにおける借入金・利息・費用の返済・支払は、信用組織・外国銀行の支店における顧客の支払口座又は決済中間サービス提供組織における顧客の電子マネーを通じて実施されなければならないこと

(h)  Sandbox制度に参加するP2Pレンディングソリューションを利用する借手及び貸手間の契約の期間は2年を超えないことを確保するための措置を有すること

(ⅲ) 外国投資資本を有する企業ではないこと

(iv)  法定代表者、総社長(社長)はベトナム国籍を有する者であること;犯罪歴がないこと;金融、銀行及びサイバーセキュリティの分野で行政違反処罰を受けていないこと;同時に金融、銀行、質屋サービスの経営、又はマルチレベル方式に従った経営(所謂マルチ商法)(※3)をする企業の所有者、管理者ではないこと;頼母子講、互助会等のオーナー又は信用組織、外国銀行の支店、決済中間サービス提供組織の取締役、社員総会のメンバー、監査役会のメンバー、総社長(社長)、総副社長(副社長)及び同等の職名にないこと 

(v)  次の最低要求を確保するP2Pレンディングソリューションを実装するデジタルプラットフォームに対する人員、物的設備及び技術に関する標準を充足すること:(v-i)情報技術システム、情報保存システムは、ベトナム領土内に設置され、安全かつ継続的であることを確保して運用され、事故、特に技術に関する事故が発生する場合に中断が生じないように、予備技術システムがメインシステムとは独立していること、(v-ii)全顧客及び関係者のデータ、情報は、高度な機密性を有するデジタルプラットフォームで更新、保存及び共有され、参加者間の明白性、公開性を確保すると共に、法令の規定に従い、関係者ではない者に対しては、参加者の情報の機密性は保持されなければならないこと、(v-iii)運用前に情報技術システムの試験及び評価をすること、(v-iv)担当分野に関する専門レベルを有する技術幹部チームが、安全かつ継続的な運用システムを確保すること

3. 終わりに

Sandbox制度に参加する組織には、一定の報告及び情報提供や顧客保護等に関する規制が科されることになる反面(同第15条、第16条等)、Sandbox制度への参加は、当該参加組織が、法令に規定がある場合の経営及び投資条件を充足することを意味するものではなく(同第5条第2号)、また、Sandbox制度の参加完了時にベトナム国家銀行から発給される完了証明書は、当該参加組織が経営投資条件を充足することを証明する価値を有さない(同第21条第3項)とされている等、少なくとも本件議定上はSandbox制度に参加することのメリットは明らかではないようにも思われ、Sandbox制度への参加を検討するに当たっては、この点も勘案する必要があるものといえます。

また、本件議定は施行したばかりの段階にあり、ベトナム国家銀行がどの組織に証明書を発行したか等については現時点で特段の情報は見当たりません。なお、2025年7月1日にベトナム国家銀行等により開催された、「銀行分野における監督付試験制度に関する政府の2025年4月29日付Decree No. 94/2025/ND-CPの実装」と題するセミナーにおいて、ベトナム国家銀行副総裁からは、今後Sandbox制度を拡充する等との発言もある等(※4)、このSandbox制度には追加変更等がなされる可能性もあり、今後の動向を引き続き注視していく必要があります。

「寄稿」ベトナム・オフショア開発の今:スピード、適応力、そしてAI
VNEXT JAPAN 株式会社(https://vnext.co.jp/

はじめに: 変貌を遂げるベトナム・オフショア

ベトナムのオフショア開発は、もはや単なる「低コスト」だけでは語れません。今日の市場で成功を収めるには、スピード、適応力、そして最先端技術の導入が不可欠です。特に生成AIの活用は、プロトタイピングや検証サイクルの速度を劇的に向上させ、日本の企業がオフショアチームと連携するあり方そのものを変えつつあります。

I) 市場の現状 – ベトナム・オフショア開発

ベトナム・オフショアの背景

オフショア開発とは、コスト削減、専門スキルの確保、そして開発期間の短縮を目的に、海外のチームにソフトウェア開発業務を委託する手法です。日本の企業がオフショアを選択する主な理由は以下の通りです。

  • 国内の人員不足を補い、開発体制をスケールさせるため。
  • AIやFinTechといった特定の技術分野における専門知識を活用するため。
  • デジタル製品の市場投入までの時間を短縮し、競争力を高めるため。

一方で、オフショア開発プロジェクトにはいくつかの重要な考慮事項があります。

  • コミュニケーションの壁: 認識の齟齬がプロジェクトの遅延につながることがあります。
  • 文化的な違い: 働き方や品質に対する期待値の違いを理解し、すり合わせる必要があります。
  • 知的財産権(IP)とデータセキュリティ: 厳格な管理体制と契約が不可欠です。
  • 厳密なプロジェクト管理: 特にAIのような最先端技術を扱うプロジェクトでは、より高い管理能力が求められます。

ベトナム・オフショア市場のトレンド

ベトナムのオフショア市場は、コスト重視から価値重視へとシフトしています。コスト削減は依然として重要ですが、経営層が今、より強く求めるのは以下の点です。

  • プロトタイピングのスピード: 概念検証を迅速に行い、市場投入前にアイデアを素早く検証したいというニーズが高まっています。
  • 柔軟性と適応力: 変化する要件に迅速に対応できる能力が求められます。
  • 先進技術の導入: 生成AI、クラウドネイティブ、自動テストなどの技術活用が標準となりつつあります。
  • 専門分野の知識: 特定の産業(例:eコマース、製造業)に特化したパートナーは、より効果的なソリューションを提供できます。

これらのトレンドを裏付けるデータが多数存在します。

  • ベトナムに進出している日系企業は、2023年時点で3,200社を超え、その多くがITサービスを利用しています。(出典: B&Company)
  • ベトナムのITアウトソーシング市場は、2024年の7億ドルから2028年までに12.8億ドルに達すると予測されており、堅調な成長が期待されます。(出典: Dirox 2024-2025 Market Report)
  • 在ベトナム日系企業の56%以上が今後1~2年で事業拡大を計画しており、これはASEAN平均を大きく上回る数字です。(出典: JETRO 2024年調査)

II) VNEXTの活動事例:スピードとイノベーションの選択

この変革を体現する好事例が、ベトナムの中堅企業であるVNEXTです。同社は、その俊敏性、技術力、そして日本企業に寄り添ったコミュニケーションを組み合わせることで、オフショアパートナーがいかに迅速かつ信頼性の高い高付加価値ソリューションを提供できるかを示しています。

こうした市場の動きは、VNEXTのような中堅企業においても顕著に現れています。通常4〜12週間かかるプロトタイプ開発をわずか3週間で完了させたり、RAG(Retrieval-Augmented Generation)チャットボットをわずか2週間で構築したりするなど、新しいアジリティの基準を提示しています。

表1:VNEXTのプロジェクト・スピードと価値の比較

プロジェクト種別典型的な開発期間VNEXTの期間備考・付加価値
プロトタイプ4〜12
週間
3週間概念検証を早期に行い、市場投入を加速
RAGチャットボット2〜4
ヶ月
2週間情報検索の機能を即座に提供
AI-PoC2〜4
ヶ月
4週間実行可能性を迅速にテストし、統合の可能性を評価

この表は、価値ある成果を迅速に提供するVNEXTの優位性を明確に示しています。

市場の要求に応えるVNEXTの手法

VNEXTのような企業は、市場の厳しい要求に応えるため、独自の取り組みを進めています。

  • 迅速な開発手法の採用: 市場の動向に素早く対応するため、プロトタイプ開発期間を大幅に短縮する手法を確立しています。これにより、クライアントは短期間でアイデアを検証し、迅速な意思決定が可能になります。
  • 最新技術への適応力: 多くの企業が生成AIツール(GitHub Copilot、ChatGPT、Claudeなど)を開発ワークフローに積極的に統合し、コーディング効率と品質を向上させています。これは、ベトナムのIT企業が持つ、新しい技術を貪欲に取り入れる姿勢を象徴しています。
  • 顧客志向のコミュニケーション体制: コミュニケーションの課題に対し、日本語での円滑なやり取りや、密なフィードバックを重視するワークフローを確立することで、日本企業との認識の齟齬を最小限に抑えるよう努めています。
  • 共創(コ・クリエーション)への志向: 単なる開発委託にとどまらず、クライアントのビジネス課題に深く関わり、並走しながら解決策を共に探す「共創」を志向するパートナーシップが主流となりつつあります。

結論

ベトナムのオフショア開発は、もはや単なるコスト削減の手段に留まらず、スピード、適応力、そしてAI導入といった真の価値を追求する新たな局面を迎えています。今後、この市場は企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる戦略的なパートナーとして、さらに重要な役割を担っていくでしょう。

出典