海外に子会社を設立し事業展開していく場合の事業資金の調達方法として、親会社から子会社に資金を貸し付けること(以下、「親子ローン」という)は多いと思います。この場合に留意する必要がある、子会社所在地国における主な税務上の課税関係について、ベトナムを例にして取り上げてみたいと思います。

親子ローンに関しては、以下の3つのポイントについて注意が必要です。

1.利子に対する日本親会社のベトナムにおける課税

親子ローンにより受け取る利子は、ベトナム税法上、日本親会社のベトナム国内源泉所得として取り扱われるため、ベトナム子会社から日本親会社への利子の支払い時に、外国契約者税(法人税と付加格税から構成されるもの)が課されます。現行のベトナム税法では、利子の場合、法人税分の税率が5%、付加価値税分が免税と規定されています。また、日越租税条約では、利子の限度税率が10%と規定されていますので、親子ローンに関する利子はベトナムにおいて5%で課税されることとなります。

2.ベトナム子会社の利子に対する損金算入性

親子ローンの場合、ベトナム子会社が支払う利子の一部が損金算入されない可能性があります。利息費用の損金算入限度額がEBITDA(利払前・償却前・税引前の純営業利益)の30%までとなります。ここでの「利息費用」とは、受取利息と支払利息と相殺された後の純支払利息と規定されています。なお、損金不算入となった利息費用は、原則として翌年以後5年間繰り越すことが認められています。

3.独立者間取引に基づく利子の設定

親子ローンの利子が独立企業間価格に基づき決定されているかを確認する必要があります。親子会社間の取引である親子ローンの利率の設定が利益移転を考えた恣意的なものであると評価されることがないよう、ベトナムと日本の移転価格税制の観点から独立企業間の利率を決定し、証拠資料(申告書の作成、文書化の用意等)及び必要な申告手続き等を確認することを推奨します。

本稿では、ベトナムを例として取り上げましたが、同様の問題は他の国でも生じることが予想されます。