日本企業がベトナムで子会社を設立した場合で、ベトナムの付加価値税(VAT)を還付申請できる要件の概要について解説します。
新規設立会社が投資段階(売り上げが発生していない段階)にあり、VATの控除方式(アウトプット(売上)VATからインプット(仕入)VATを控除する方式)を採用しており、この投資段階で控除しきれないインプットVATの金額が3億ドン以上であれば、原則としてVATの還付申請が可能となります。
VAT還付を申告するためにはいくつかの要件を満たす必要があります。例えば、ベトナム付加価値税法に規定するVAT還付対象者に該当すること、ベトナム会計制度に基づく会計帳簿を作成・保管すること、インプットVATの控除規定を満たしていること、かつ還付申請者に対して発行されたVATインボイスに記載されたインプットVATを販売者が申告・支払済みであること等です。このインプットVATの控除規定では、購入商品に関する適格VATインボイスの存在、VAT込みの支払額が5万ドン以上であれば銀行決済のような支払の証拠等が必要とされています。
還付手続きの流れと注意点は、下記のようになります。
1. 還付手続きの概要
VAT還付の一般的なスケジュール感は税務管理法と通達で確認できます。
三つのステップがあります。
ステップ1.還付申請書類の準備
還付申請書、還付に関わる関連書類(例えば新規プロジェクトであれば、投資登録証明書のコピー等)を準備します。
ステップ2.還付申請書類の税務当局への提出
還付申請書類は以下の三つの方法で提出可能です。
(a) 税務当局の窓口に提出
(b) 税務当局に郵送
(c) 税務総局の電子取引ポータルを通じて電子書類を送信
ステップ3.税務当局による処理方針の納税者への通知
税務当局は還付申請書類を受領してから3営業日以内に還付申請書類を分類(※)し、「書類の受理と処理期限の通知」、「書類の不備」、「還付を認めないこと」のいずれかを所定の様式で納税者に通知します。
※VAT還付の場合には二つのケースが想定されます。
ケース1:調査前に還付対象となる場合
書類受理の通知書を発行してから6営業日以内に還付を認めるか、還付前に調査をするか、還付を認めないか、のいずれかの結果を決定する。
ケース2:還付前に調査が必要な場合 (例えば、初めて還付申請を行う企業)
書類受理の通知書を発行してから40営業日以内に還付を認めるか、還付申請を拒否するか、いずれかの結果を決定する。
2. その他の注意点
- 納税者からの補足情報の提供にかかる期間は上記の期間に含まないこととされています。また、上記のスケジュールは法律上の規定ですが、実務上は、規定より時間を要しているケースが多いようです。
- ケース1の調査前に還付対象となる場合では、還付決定から5年以内に調査を実施する可能性があります。
- ケース2の還付前に調査が必要な場合には、調査を納税者の施設で実施します。
- 上記の処理期限までに還付決定の書類を発行できない場合の還付金額に対する利息(一日に当たり0.03%)に関する規定は2025年1月1日以降、税制改正で廃止されました。